PDLが実質米国3部に?米国2部サッカーリーグNASLが存続危機に

2017年の米国サッカー界は今年と全く違うものになるであろう

 

 2009年に創設され、米国2部リーグとの位置づけをされてきたNASL(ナショナル・アメリカン・サッカー・リーグ)が、財政面での問題によりリーグ存続の危機にさらされている。一部報道によると、早ければ来年2017年には既に米国サッカー界から姿を消すとのことだ。過去にはスペインの英雄ラウール選手が在籍し、近年では元ブラジル代表FWのロナウド選手もオーナーとしてクラブを運営していたNASLに、一体何が起こっているのか。

 

深刻な加盟クラブのリーグ離れ

 

 NASLが抱える最大の問題は、所属クラブのリーグ離れだ。2016年現在、NASLには12のクラブが所属しているが、このうち、多ければ5つのクラブがリーグから脱退するという。リーグ内でトップの平均動員観客数を誇ってきたミネソタ・ユナイテッド(2016年の平均観客動員数は8,545人)は、2017年シーズンからそのプレーの場を1部MLSに移すことが既に決定しており、2015年シーズンにNASL2位に輝いたオタワ・フリーと、過去には元日本代表の山田卓也選手も在籍したタンパ・ベイ・ローディーズは、2017年より3部USLに加盟することが有力視されている。MLSの平均観客動員数が21,524にまで増えるなか、そのわずか4分の1にも満たないNASLの人気は取り返しのつかない状況にまできているにも関わらず、そんなリーグを牽引してきたミネソタやタンパなどのクラブがリーグを後にするのは、リーグにとって大きな痛手である。

 

リーグの人気低迷によるクラブの経営危機

 

 他リーグへの加盟を表明するクラブとは反対に、経営上、リーグから脱却せざるを得ないクラブもまた存在する。フロリダ州のラウダーヒルに本拠地を置くフォート・ラウダーヒル・ストライカーズは今月1日、クラブに対するこれ以上の資金投資が不可能であるとの声明をクラブオーナー自らが発表した。これにより、今年一杯までのクラブの経費はリーグが負担することとなり、そのリーグの負担額はおよそ1億3,000万円から1億8,000万円にまで及ぶとの推測がされている。また、経営困難に陥っているクラブは1つに留まらない。9月22日現在でストライカーズを除く4つものクラブが、翌シーズンのリーグ参加費を支払えていない状況にある。12チーム中最大5チームがリーグを離れ、4チームが翌シーズンの存続に不安を残す状況に、リーグとしても戸惑いを隠せないはずだ。

 

伝統クラブの本拠地スタジアムは私立大学のフットボール兼用スタジアム

 

 NASLでは最も歴史と伝統のあるクラブとされるニューヨークコスモス。かつてはサッカーの神様ペレ選手を獲得し、爆発的人気を博す時代もあったが、今年は1試合あたりの平均動員観客数が4,302人と、2015年の6,207人、更には2013年の6,859人から下降線をたどる一方。それもそのはず。米国2部プロクラブであるコスモスが本拠地として使用するスタジアムは、なんとヘンプステッド郡内の私立大学が完備するフットボールとの兼用スタジアム。更に、仮にリーグが2017年シーズンも継続して行われた場合、コスモスは私立大学のスタジアムですら使用が困難となり、最終的にブルックリン市内のマイナーリーグベースボールチーム「ブルックリン・サイクロンズ」が本拠地として使用する球場を借りて2017年シーズンを戦うことになるという。米国4部のPDLでもサッカー専用の本拠地スタジアムを完備するクラブは多く存在している中、やはりこれではファンも納得しないだろう。

 

NASLの時代はもう終わり。新時代の注目度ナンバーワンリーグは4部PDL!?

 

 NASLが本当にその歴史に幕を閉じることとなれば、ここで活動していた選手そしてコーチは溢れかえり、米国内に存在するサッカークラブの需要はより高まるだろう。特に、急成長を遂げる1部MLSと、そのMLSと直接的な関わりを持つ3部USL、更にUSLとは姉妹リーグにあたる4部PDLにとっては、独占状態に入るといっても過言ではない。反対に、2部NASLと協力しMLSを越えるリーグの形成を目指していた4部NPSLにとっては、先行きが不安視される結果となりそうだ。米国にプロのサッカーリーグが2つしか存在しなくなるのは残念ではあるが、MLSやUSLのことである。新たなプロリーグが誕生してもおかしくはないだろう。そうなった場合、USLが2部となり、PDLが3部との扱いを受けるのか。はたまた、PDLの厳選されたクラブだけで3部プロリーグを発足することとなるのだろうか。いずれにせよ、米国サッカー界はMLSとUSLの独占に拍車が掛かることが予想される。