米国大学へのサッカー進学を目指す中高生を対象とした米国大学サッカーセレクションが昨年に続き今年も福岡県宗像市のグローバルアリーナにて実施された。12月17日と18日の2日間に渡って開催されたセレクションには、米国でのチャンスを夢見る総勢100名以上の選手が参加し、米国から招聘されたコーチ陣が提供するトレーニングに励んだ。昨年に続き2度目の実施となる今回のセレクションには、県内外から多数の報道陣が詰めかけた他、来る3月の米国大学女子サッカーセレクションを見据えて、共催を務めるAC長野パルセイロレディースの関係者や、後援企業の関係者らも視察に訪れた。12月の寒さとはうらはらに、会場は熱気に包まれた。
今年のセレクションには大学3校と4部USL PDLから1クラブが参加。NCAAディビジョン1所属サンディエゴ州立大学からレフコーチ、NCAAディビジョン2所属カリフォルニア州立ポリテクニック大学ポモナ校からヨッシコーチ、そしてCCCAA所属サウスウェスタン大学からチェムコーチの、こちらの3名が今年のメインコーチだ。チェム監督はUSL PDL所属サンディエゴゼストFCの監督も兼任する。今回のイベントは、大学サッカー部セレクションとゼストFCトライアウト兼ねたコンバイン。参加選手も、大学進学を目指す高校生に加え、ゼストFCへの加入を目指す大学生や社会人が顔を揃えた。今年はNCAAディビジョン1所属大学が参加したことと、ゼストFCが初年度に残した成績との2つの要素が上手く噛み合い、参加選手のレベルは第1回目を遥かに上回るものとなった。
SDSAが主催する米国大学サッカーセレクションは、セレクションと言えど単に選手が紅白戦を行い、それをコーチが傍から評価する一般的なそれとは異なる。ここでは、参加選手は3つのグループに分けられ、各グループに配置されるコーチのトレーニングを受けながら、評価がされる。コーチは選手を直接指導し、改善すべき点に関しては選手に妥協を許さないほど声をあらげ、情熱をもってプレーの質向上に努める。たった2日間といえど、コーチは彼らを我がチームの選手のごとく愛情と熱意をもって接する。こうすることで、たとえ結果的に大学やクラブから声が掛からなくとも、日本では経験することのできない一つの刺激的なイベントとして、選手の頭の中のアルバムに一生の思い出として刻まれる。現に、セレクション後には、参加者からこういったフィードバックを受けることが多く、それが運営側のモチベーションともなっている。実際に米国からコーチが来日しても、選手名簿とペンを片手にグランド中央で椅子に座りながら紅白戦を観戦しているだけでは、参加者にとっては、初めて会う選手と試合を行い、それをクラブのジャージを身に纏った中年男性が見学しているだけに過ぎない。ここでは、トレーニング後には選手達を教室に移動させ、米国サッカーの仕組みに関する講義も実施する。年に一度しかない機会である。わざわざ日本全国から集まってくれた選手たちには、それ以上のものを得て帰っていって欲しい。これこそが、セレクションを通して選手たちに送る、SDSAと米大コーチ陣からのメッセージなのだ。
今回のセレクションからは、3-5名の選手が米国への切符を手にする。とは言っても、彼らも米国では補欠からのスタートとなるであろう。それはサッカーの能力だけに限らず、語学力や精神面を踏まえてのこと。今回のセレクションで感じたこととして、やはり日本人選手の技術は米国と比較しても長けている。しかし、今回のメンバーに限って言うと、戦える選手であるかといえば、そうではないだろう。言葉の壁を度外視しても、コミュニケーション能力は世界と比べてまだまだ改善の余地がある。しかしこれは、世界に出てはじめて気付くことでもある。今回チャンスを掴んだ若者達が、米国でいくつもの壁にあたり荒波に揉まれることで、サッカーを超越して、一人の人間として何倍も成長していってくれることを願う。最後に、今回のセレクションにご協力頂いた様々な方々に、心より感謝を申し上げたい。ありがとうございました。